2021年9月30日

大阪・阿倍野区昭和町は大大阪時代に区画整理され質の良い近代長屋が比較的多く残る町。この町で長屋暮らしをしながら、設計事務所を構えています。大阪では春先に医療崩壊が伝えられ、現在は第5波真っ只中で感染者数の増加が日々報じられていますが、小さなコミニティーの中で仕事をすることが多く、コロナ禍であっても仕事への影響は少なく済んでいます。
古い長屋を住まいや小商いの空間へ改修したり、空き家を改修してテナントを誘致するなど、地元のまちづくり、不動産の専門家とともに建築単体だけでなく地域の価値向上を目指すエリアリノベーションに取り組んでいます。また、町の生活者の立場で、身近なよき商いを守り育てる運動「バイローカル」を8年前から仲間たちと取り組んでいます。

魅力的な飲食店、特徴のある品揃えの古本屋、こだわりのモノづくり工房など店主の顔の見える小さな商いがあることが、その町の魅力となり、わたしたちの暮らしを豊かにしてくれる、という想いで、町の人たちとお店の出会いの場としてのマーケット「バイローカルの日」を一年に一度開催しています。日常的にはWeb媒体で店舗情報を発信したり、お店情報の掲載したMAPを配布したりと、よき商いと町の人をつなぐ活動をしてきました。今ではおおよそ2km圏内程度の地下鉄二駅沿線内で100店舗ほどの店舗とのネットワークができました。店舗どおしも互いのお客さんを紹介しあったり、自分たちもお客さんとして足を運んだりと、横のつながりも自然と出てきています。

昭和町のひと駅向こう天王寺駅には大型ショッピングセンター、大手チェーン店が並びます。大資本店舗がコロナで営業自粛となっても、この町の小商いは工夫を凝らしながら店を閉めることなく地域の暮らしを支えてくれました。「昭和町はコロナでもあんまり生活が変わらないねー」「都心へ出ずともこの町で事足りるね」というような町の人の声も聞こえてきました。
コロナ禍では遠方への移動や密な状況を避けることを余儀なくされ、より身近な地域経済の重要性を見直すきっかけとなりました。「コロナと地域経済」というキーワードがわたしたちが取り組んできたバイローカルのコンセプトと合致して、いくつかのメディアから取材を受けたり、地方の町から講演の依頼があったりと、この一年で反響が多くありました。
地元の町に根付いて、仲間たちとコツコツ取り組んできたバイローカル運動や、町の魅力的なストック利活用を中心に地域の人のために仕事をすることが、非常時に強い町づくり、縮小社会においても豊かな暮らしができる町づくりに確実につながっている。ウィズコロナ、ポストコロナの世界においても進むべき未来だと実感しています。
